毎日09/15 00:20 ＜ニュースがわかる＞オゾンホール　紫外線障害、多く発生

1.キイワード；オゾンホール

2.関係者；米航空宇宙局（ＮＡＳＡ）

3.概要；オゾンホールとは、成層圏下部（高度１０数キロ）にあるオゾン層が破壊され、人工衛星で観測すると穴が空いたように見える現象です。１９８５年に発見されました。オゾン層がなくなると、太陽から有害な紫外線が地上に降り注ぐため、皮膚がん、白内障などの病気が増えるといわれています。ニュージーランドでは、４０年間で男性の皮膚がん死亡率が倍増しました。オゾンホールが発生する１０〜１１月に南極の昭和基地に滞在した人には、結膜炎、皮膚炎などの紫外線障害が、太陽高度がほぼ同じ１〜２月に滞在した人に比べ、約２倍も多く発生しています。

どうしてオゾンが破壊されかですが、冬に塩素や臭素などを含む気体が南極上空で氷の雲と反応し、雲に取り込まれます。南半球の春にあたる９月になって太陽光が当たると、塩素や臭素が大気中に放出されオゾンを壊すのです。これらの気体は人工的に作られたもので、半導体の洗浄剤や冷蔵庫の冷媒などに使われるフロンの影響が特に大きいことが分かりました。北半球の先進国から放出されたフロンは高度１０キロ以下を南に流れ、赤道上に届きます。そこで高度約２５キロまで上昇し、その後、北と南に分かれて北極と南極に到達します。

なぜ、南極の破壊が大きいかは、周りの大陸から暖気が入り込む北極に比べ、南極は上空の気温が低く、氷の雲がたくさんできます。このため、オゾン層が破壊されやすいのです。世界気象機関によると、今年の南極は上空２０キロの気温が例年に比べて低く、氷点下９３度まで下がりました。オゾンが壊れやすい条件が整っていたのです。

フロンは９５年に製造が禁止されたはずですが、禁止されたのは、特定フロンというフロンで、大気中の濃度は９０年代半ばがピークでした。しかし、特定フロンは壊れにくく、２１世紀半ばまでオゾンホールは現れると予測されています。代わりに使われる代替フロンは、オゾン層への影響は少ないのですが、地球の温暖化を加速するという別の問題が指摘されています。　【科学環境部・田中　泰義】