020.05.28 メルトダウン 高島哲夫 1994年 講談社 458ページ 小説現代推理新人賞
かなり分厚い本である。舞台は、ワシントンＤＣとカルフォルニア、
テーマは核拡散と軍拡競争,産軍共同企業体、ホワイトハウス内の権力闘争である。
純日本人はこのような舞台で小説を書くこと自体、稀有では。
３０才まで原子力業界にいてそれから脱サラ、学習塾経営しながら長編小説を何本も書いているのですから大変な才能の持主。
メルトダウンは原子炉のメルトダウンを想像されるが、本小説は無関係。この題名は売るための営業政策。
それでも原子力に触れる部分は多数あるが、正確な記述でした。
本筋は、大手産軍共同企業体が軍拡で大儲けしようとして、ホワイトハウス内の軍縮派を殺害。
第四の核というウラン２３８が触媒で核分裂性物質にかわり、世界のどの国でも核兵器を作れるようになるので軍拡競争が始まる。
この第四の核のストリーをマンハッタン計画に関与した学者の遺言として、サンディエゴの小新聞社の記者がスクープして
ワシントンポストの記者と協力して、産軍共同企業体の悪漢グループと倒すというスケールの大きな話。
ただ余りにも大きな話でリアリテイに欠けるのが欠点。
ハードボイルド・タッチですね。才人なのは確かだが、思考形態がわかるので彼の他の小説は読む気はしません。
これは趣味の問題で、この手の小説が好きな人には好まれる作家では。