020.02.2４ 石川淳との一夜 吉行淳之介 1994年3月
石川淳と会話をしたのは2回のみ。最後は２−３か月前、銀座の菊鮨に金井美恵子と出かけた時。
あとから、石川淳と丸谷才一が入ってきた。
その会話のなかで石川淳が「ご尊父を知っている」とのこと。
そこで「親父の親しい友達に近藤一郎という人がいたがご存じですか」と尋ねた。
知らないという答えを予測していたが、
にわかに笑顔になり、「あれは良いおとこです。あんなおとこはもう出てこないだろう」とのこと。
エイスケが芸者にうませた子供を自分の戸籍にいれるほど親しかった。
戦後は岐阜に戻り、女子大の教授になった。
内藤陳というボードビリアンがいた。日劇ミュージックホールにでていた。
アンジェラ浅丘とか松永てるほとは顔なじみであった。
内藤陳とは、銀座の小さなバーで時々であった。異形で酒癖もよくない。
ふとしたときに、内藤陳の父親が、プロレタリア作家の内藤辰雄であった。
エイスケの知り合いで名前はよく聞いていた。
内藤陳にあったときにその話をうるかしんまいか迷っていたが、ついに喋った。
内藤陳は父親のことを誇りに思っている知った。
6冊本の「日本近代文学大辞典」に内藤辰雄24行、近藤一郎は項目がなかった。