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020.02.23 井伏さんを偲ぶ 吉行淳之介 1994年3月

井伏はエッセイで吉行エイスケの家を訪問したときに小さな子供がいてそれが今の淳之介と書いていた。

昭和初年はプロレタリア文学全盛で目立つ新人はなにもかも芸術派と分類、
吉行エイスケも芸術派。井伏鱒二は出遅れていて、ナンセンス文学の作家と言われていた。
中村正常(中村メイコの父)と合作でナンセンス小説を書いている。
中村正常は戯曲マカロニで颯爽と登場、時局にいやけがさして筆をおる。すごい才能の持ち主であったがm
時代の流行・風俗に沿い過ぎている。これはエイスケも同じである。

エイスケ発する文学のことは一切話さず,筆を追ってからは書類もほとんど売り払った。
自分は旧制中学5年のときに腸チフスにかかり1年休学、その間に父は死去。
この間、井伏鱒二の本はよく読み、みんな良かった。
井伏さんに最後に会ったのはいまから20年前。
作品という分厚い雑誌の編集長が、八木岡英治で追悼の会に出た時に、井伏にあった。
会合の後に新宿で飲みなおすことになった。
「吉行くん、君は本当のことを言い過ぎるんだよ」と言われた。叱責するわけでもなく静かに。
その席に大岡昇平もいた。
そこに酔った長谷川四郎がきた。
井伏の肩に頭をのせて「井伏さんはいいな」とつぶやいていた。特に嫌がる風でもなかった。
編集者がまずいと思ったのか、長谷川四郎を店の外に連れ出した。
大岡昇平があれは誰かと尋ねるので、長谷川四郎です。お仲間ではないかというと、
それはまずい、T社の編集者が皆に紹介しなkれば。
井伏鱒二はその話には加わらず、機嫌よくしていた。