2019.12,01　眠る盃　中野と新宿のライオン　向田邦子　1980年

向田邦子の向田邦子の随筆、中野と新宿のライオン、読みました。面白かったですね。
人間の記憶がいかに不確か、一方、一瞬の記憶は写真のフィルムのように変わらず残るというもの。
中央線から中野駅を出たところで、当時は民家が近接で中の食事の様子まで見えたとか。向田邦子の出版社勤務時代の
通勤の話。ですから1959年以前ですね。
新宿のライオンの話で、最後のオチ、あと２０年、３０年したら耄碌した私は、こんなことを
言うかもしれない。「昔、新宿でライオンとお酒をのんだことがあったのよう」
この随筆を書いたのが向田邦子が1979年49才のとき、事故死が51才のとき。ですから、この随筆の2年後に思わぬ
鬼籍入り、無情ですね。

中野のライオン　向田邦子
別冊小説新潮1979年春季号、
２０数年前、杉並に住む。日本橋の出版社に勤め中央線で通勤、
当時は、電車は眼と鼻のところに木造二階だてのアパートや
住宅が立ち並ぶ、、夏の夕、中野駅を出たところ
方、雄のライオンと３０才くらいの痩せた貧相な男を目撃。
アンダーシャツ姿、向田邦子は視力1.5

新宿のライオン、向田邦子
別冊小説新潮1979年夏季号
中野のライオンの発売後数日して青山の自宅に電話、「実は中野でライオンを飼っていたものだ
が。岡部氏、もともとは新宿御苑あたりで、岡部氏の姉上が
飼っていたものを、姉の死後、引継。
これを契機に種々のひとから中野のライオンの話し。
５月に新宿で岡部氏に合い、昔話。
「あいつはただの一度も吠えなかった」
自分達の２０年昔を、青春を懐かしみ語り合ったのかも知れな
い。記憶というものはシャッター
と同じで一度、焼き付くと変えることができない。
楽しく不思議な一夜であった。
あと２０年、３０年したら耄碌した私は、こんなことを
言うかもしれない。「昔、新宿でライオンとお酒をのんだことがあったのよう」