2019.11,2６ 姉貴の尻尾 向田保雄 1983年刊
「姉貴の尻尾―向田邦子の思い出：向田保雄著、1983年」を読みました。向田邦子の2才下の実弟、姉の事故死の
2年後の回顧談ですね。向田邦子本では福助頭(頭が大きい）ののろまな弟として描かれているのですが、その弟から
見た姉ですね。1997年に65歳で病死、独身のまま。文才ありですね。
面白かったのは、姉弟で洋画を見に行き、前にヤクザ風の男と派手な女が座り、邦子は小柄なので前の女のフードが邪魔で映画が見えないので、フードを脱いでくれと
文句を付けたら女はうるさいと反発、男は脱いでやれと常識的な反応。休憩時に邦子がピーナッツを買い、映画が
終わり出る時に、そのピーナッツの皮を前のその女の脱いでいたフードに入れて、二人で走って逃げたとか。
邦子は酒好きの酒豪でいくら飲んで素面、ところが一度だけ泥酔したことがあり、それは1980年の大晦日のNHKの
紅白歌合戦で審査員に選ばれた（これは直木賞受賞だからでしょう）日の夜とか。
あと、台湾の実業家と結婚式の
日取りまで決めていたが、破談。理由は相手に台湾で妻がいたとか。保雄は邦子にカメラマンの恋人がいたことについては
何も語っていないが、語ると生きている人に迷惑がかかるので書けないと示唆してますね。
この本の肝は1981年8月22日に飛行機事故を知り、保雄が台北まで飛び、遺体確認、火葬、遺骨を南青山マンションズまで
持って帰ることですね。向田家としては保雄1人のみ親族代表として参加。その1週間近くを詳述してますね。
鬼気迫るものですね。のろまな弟の違う姿ですね。
アマゾン：姉貴の尻尾―向田邦子の思い出
内容（「BOOK」データベースより）
好奇心旺盛でお転婆で、おだてに弱くせっかちで、人には見せない地道な努力家、家族思いのやさしい長姉…。実弟が遠慮なく、あたたかく語る素顔の向田邦子像。いきいきと甦る、早世した稀有な作家の、なつかしい面影。姉に似た達意の文章で、もの書きという愉快な変てこ人間を描く、しみじみ楽しい好著。