文藝春秋のこの3が都合の秘めたる恋は、映画細雪で吉永小百合と共演した
江本こうきの出演の回顧談がありましたす。
谷崎の1943年発表の細雪はいままで３度映画化、劇場では数限りなく上演と
いう四人姉妹を主役のヒット演劇。４人主役だと
１人の負担がすくなくなるし、また平等に配役できるので
女優には人気の劇なのでしょうね。
これ、チェーホフの1901年にモスクワ芸術座で上演された、
三人姉妹に対抗するとの谷崎の意図があったのでは。
日本が生きるか死ぬかの戦争中にこのような作品を
発表というのは、筋金入りの芸術至上主義ですね。
当時の職業作家の９割は文学報国会に参加では。
残り１割はプロレタリア作家などは沈黙。
谷崎のように時局にさからう作品を発表したのは１人
だけだったのでは。
細雪は谷崎の妻、根津松子をモデルですが、結婚したのは
1935年。これ、始めから細雪を書くつもりで、取材のために
結婚したのでは。陸軍のクレイムで発表できなくなっても
1944年に私家版で刊行したということは、それだけ
細雪への思い入れが強かったのでは。戦争中ですから、
明日の命はわからず、よって何としても細雪を残したと
いと思ったのでは。
名作にはやはりモデルが存在するし、必要なのでしょうね。